「親方は、理事長選敗北後、協会の花形であるナンバー3の審判部長から巡業部長に降格させられた。猛稽古で鳴る親方だけにうってつけの人事とも言えるが、本人は日頃からウンザリしている様子だった」(スポーツ紙相撲記者)
そうしたシコリがいまだに残っていたとの見方もあるが、その中で、今回の貴乃花親方の不可解な言動の数々は、いったい何を意味するのか。
「この手の暴力事件は本来、親方同士で話し合い、外部に出さない。それが相撲協会の不文律でした。それだけに貴乃花親方の行動は理解に苦しむ」
とは、相撲ジャーナリスト・中澤潔氏。
11月14日、貴乃花親方が自ら専属評論家を務めるスポーツ紙によって、事件の一報は世間に伝えられた。
「当然、親方がリークしたと考えられ、記者クラブにも貴ノ岩の休場の理由が発表されることはなかった」(ベテラン相撲記者)
貴ノ岩の被害届が鳥取県警に提出されたのは、10月29日。事件から3日後で、しかもその間、貴ノ岩は巡業に参加していたことも疑問として残されている。加えて、なぜ貴乃花親方は協会に報告しなかったのか。11月3日に協会が事情を聞いた際には「分からない。転んだと聞いている」と濁した理由、被害届とともに鳥取県警に提出されたものと11月9日付で貴乃花親方が協会に提出した異なる2通の診断書が存在するなど、あまりに理解不能な点が多すぎる。
「来年1月の理事・理事長選を見据え、一見、現体制を揺さぶる意思があったようにも思えるが、本当に挑むのであれば、まずは理事会で議題にし、そこで問題視されないことを見定めてから八角理事長を追及するべきだったのではないか。やはり真意を図りかねる」(相撲関係者)
首尾一貫しない貴乃花親方に、八角体制に批判的な某親方も首を捻る。
「貴乃花親方は性格的に、目的のためなら非情になれる人ではあります。力士の上下関係で起こるトラブルの放置を、“カード”として理事長選前まで残していたのではないか。そう考えれば計画的なクーデターですが、突如のダンマリ具合を見ると、相撲界の掟を破れば自分が危うい立場に置かれることに気付いた節も窺える。ただし、内より外向きの顔を大事にしてきた親方だけに、このままの中途半端さでは自分の首を絞めることになるだろう」
クーデターか、ご乱心か。いずれにせよ、事は理事長選まで尾を引きそうだ。