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企業・経済深層レポート コロナが追い討ち 百貨店"市場衰退”で広がる空白県

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提供:週刊実話

 日本における百貨店の歴史は、20世紀初頭までさかのぼる。その多くは江戸時代の呉服店や近代に勃興した電鉄会社を起原とし、長らく“小売業の王様”として君臨してきた。

 しかし、近年は消費者の意識や行動、産業構造の変化などによって、経営難にあえぐ百貨店が増加し、さらに今年は新型コロナウイルスのあおりを受け、収益性の低い郊外エリアからの撤退が相次いでいる。

 百貨店業界の最新動向を追った。

 そごう・西武(そごう、西武百貨店)は8月31日、そごう徳島店(徳島市)、西武大津店(滋賀県)、そごう西神店(神戸市)、西武岡崎店(愛知県)の4店舗を一斉に閉店した。これで徳島県は、今年1月に地場の大沼本店(山形市)が経営破たんした山形県に続き、全国で2番目の“百貨店空白県”となった。

 経営コンサルタントが解説する。

「そごう徳島店は37年にわたって、県都の顔として親しまれてきた。ピークの1993年2月期はバブル景気に支えられ、売上高が444億円にのぼったこともあったが、最近は業績の低迷が続いていた。今後、跡地には家電量販店を誘致する方向で、徳島市が動いているという」

 西武大津店が閉鎖した跡地には分譲マンション、そごう西神店と西武岡崎店の跡地には、別の商業施設が入る予定だ。

「このほか、そごう川口店(埼玉県)も来年2月に閉店する。’06年には全国で28店を展開していたそごう・西武だが、現在は11店舗にまで減少し、さらなる削減が続く見込み。残った店舗は売り上げ好調な食料品を主体に、リニューアルを図っていく方針だ」(同)

 そごう・西武の4店舗が閉店した同日、福島市では146年続いた老舗百貨店の中合福島店が、長い歴史に幕を下ろした。これにより、福島県の百貨店は郡山市のうすい百貨店のみとなり、西武大津店が閉店した滋賀県とともに、県内に百貨店はあるものの、県庁所在地には百貨店が存在しない都道府県となった。

 近年、百貨店の閉店が止まらない理由を業界関係者が明かす。

「百貨店は顧客の高齢化に加え、スーパーなど他の小売り業との競合、インターネット通販(EC)の隆盛など、バブル期以降、長期にわたって苦境が続いている。さらに、昨年秋の消費税増税、今年の新型コロナによる外出型消費の落ち込みが、経営不振に追い打ちをかけています」

 その深刻な不振ぶりは、日本百貨店協会のデータでも明らかだ。

 同協会によると、’19年の全国売上高は5兆7547億円だったが、ピーク時の9兆7130億円(’91年)に比較すると約4割も減少している。また、同協会が発表した7月の全国百貨店の売上高は、前年同月比20・3%減だった。4月は72・8%減、5月は65・6%減で、緊急事態宣言が明けた6月は19%減にまで持ち直したが、7月は再び減少率が大きくなり20%を超えてしまった。

 7月以降も厳しい数字が並ぶ。三越伊勢丹ホールディングス(三越、伊勢丹)29・1%減、J.フロント・リテイリング(大丸松坂屋)28・1%減、エイチ・ツー・オー・リテイリング(阪急百貨店、阪神百貨店)15・0%減、高島屋19・2%減、そごう・西武8.8%減と、大手百貨店は軒並み前年実績を下回った。

 では、ここ数年、百貨店が“最後の砦”としてきたインバウンド(訪日外国人観光客)消費は、どうなっているのか。

 前出の業界関係者が解説する。

「’19年に日本の百貨店を訪れた外国人観光客は、協会統計で514万人にのぼり、全国の百貨店は裕福な中国人や東南アジア系の人々で溢れていた。それはインバウンド購買額数値にも表れ、百貨店合計で’19年4月は344億円を記録、’20年1月でも316億円だった。ところが、コロナ騒動で4月はたった5億円に落ち込んだ」

 今年1月に免税手続きした外国人観光客は約45万人だったが、コロナ勃発後の4月はわずかに2400人。緊急事態宣言解除後の6月でも1万2000人と微増で、7月〜8月も同様の傾向が続いている。インバウンド需要の消失が、百貨店経営を圧迫したのは間違いない。

 それでも体力のある都市部の百貨店は何とか踏ん張っているが、地方の百貨店は軒並み死活問題となり、閉店に追い込まれるケースが後を絶たない。

 前出の経営コンサルタントが言う。

「今後も百貨店は厳しい経営が続き、明るい材料が見当たりません。松坂屋豊田店(愛知県)や三越恵比寿店(東京都)など、各地で不採算店の閉鎖が決まっている。徳島県や山形県のように、今後は百貨店ゼロの都道府県が増加していくでしょう」

 ’20年9月1日、日本では198店舗の百貨店が営業している。しかし、10年前より65店舗減少、3年前と比較しても31店舗減っており、この流れはさらに加速しつつある。

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