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本好きのリビドー

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提供:週刊実話

 悦楽の1冊『米中もし戦わば―戦争の地政学』 ピーター・ナヴァロ/赤根洋子訳 文春文庫 970円(本体価格)

★トランプのブレーンが米中戦争を徹底分析

 4月に飛び込んできた「セオドア・ルーズベルト」艦内に感染者発生のニュースは、極めて強烈かつ背筋の寒くなる知らせだった。

 ヨーロッパの中規模程度の軍事力を持つ国(名指しは気が引けるが、例えばポーランドあたり)なら、一隻だけでその国土丸ごとを制圧できるといわれ、圧倒的な優位を誇るのがアメリカの原子力空母。まして大型のそれを十数隻保有する米海軍と正面から争って、制海権・制空権ともにまともに勝負になる国など存在しない…はずだったのが、まさかその空母を一瞬にして作戦行動不能に追い込めたのが、高速ミサイルでも魚雷でもなく皮肉にも目に見えないコロナウイルスとは。

 本書のタイトルこそあくまで仮定的だが(原題は“CROUCHING TIGER”で『身をかがめる虎』)、制裁関税や知的財産権の侵害を巡る経済面での暗闘に加え、今回、全世界レベルでのコロナまん延に関して武漢が発生源か否かを問う論争や、初動対応の遅れと情報の隠ぺいに対し集団で国家賠償を求める提訴が続出する昨今、米中両国は実質的に不可視の戦争(=中国軍人の説く『超限戦』?)に既に突入して第2ラウンドを本格的に迎えつつあるのではなかろうか。

 ’74年生まれの筆者の少年時代、多く刊行された来るべき第三次世界大戦の脅威へ警鐘を乱打するシミュレーション本といえば、もっぱら北海道にソ連軍が侵攻するというパターンがほとんどだった。冷戦終結からはや30年。本書中でありとあらゆる角度から検討の対象となる中国との衝突シナリオの数々に比べて、今顧みればはるかに長閑に思えてしまうのが空恐ろしい。単行本初版からは4年がすぎたが、コロナ収束後の国際情勢を見据える上でも、改めてじっくり目を通しておきたい。_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 昨年はこの男の没後150年だった―土方歳三・新選組副長。一世紀半を経てもいまだに人気の高い、幕末のヒーローの1人である。その実像に迫ったのが、『歴史人「新選組」鬼の副長 土方歳三の真実』(KKベストセラーズ/税込820円)だ。

 土方は武士の家の生まれではなかった。農民の四男である。家を継ぐこともできず、10代のときに商家に奉公に出て、25歳で近藤勇の門下に入り剣術修行を始めた。ちなみに近藤も武士の子ではない。農民の生まれだった。2人は江戸時代の身分社会にあって、決して恵まれた境遇にあったわけではなかった。

 素性の知れぬ浪士たちの集まりだった新選組は、京都で幕府の「犬」と嘲られ、倒幕を掲げた長州藩らと数々の死闘を演じる。だが、鳥羽・伏見の戦いで破れ、土方は北へと落ちていく。終焉の地となった箱館(現在の函館)五稜郭の戦いまで、同書は彼の生涯、生き様を丹念に解説していく。

 新選組は敵のみならず、味方同士でも暗殺と粛清を繰り返した血生臭い集団だった。その中心に、常に土方はいた。確かに冷酷で非道な輩という悪名もある。だが、一方で幕府に忠義を貫き、五稜郭で散った熱い忠義の男、鉄の信念を持つ武士という印象も伝わってくる内容となっている。

 作家の司馬遼太郎氏が土方を主人公とした小説『燃えよ剣』は、岡田准一主演で映画化されたが、コロナの影響で上映延期となっている。今後の公開を見据えて、目を通しておきたい1冊。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 松尾大
Saunner BOOK(サウナー・ブック)A-works 1,500円(本体価格)

★自分の内面と向き合う瞑想に近い状態かも

――昨年あたりから若者を中心に“サウナブーム”が起きています。何がきっかけだったのですか?
松尾 タナカカツキ氏のサウナを題材にしたマンガ『サ道』や、サウナ愛好家・濡れ頭巾ちゃんのブログ『サウナ,水風呂,大好き 湯守日記』が話題になったことで、「サウナは心地いい」と若い世代に火が付きました。また、ファッション誌などにも取り上げられたことで、「美容にいい」と女性ファンが増えたことが特徴的ですね。おじさんカルチャーとしてのサウナは、風呂上がりにビールを一杯が定番でしたが、若い女性たちの間では、シャンパンで乾杯したり、お寿司を食べに行くといったおしゃれなイメージも定着してきました。

――サウナで“ととのう”という意味は?
松尾 “ととのう”とは、心身ともにリラックスし再起動する、メンタルが安定し幸福感が高まる、リフレッシュ効果で爽快感を得るなど、五感が研ぎ澄まされ、心が静まりながら広がっていき、眠っていた機能が覚醒する感じのことを意味します。人によってはフラフラする感じをそう表現する人もいますね。“ランナーズハイ”に近い状態のように思います。自分の内面と向き合う瞑想に近い状態かもしれません。

――最近のサウナの特徴を教えて下さい。
松尾 キャンプ場などのアウトドアでテント型のサウナ室に入り、火照った身体を川の水で冷やすなんてサウナも登場しています。そもそも、日本のサウナは99・9%ドライサウナなんですが、最近ではサウナの本場フィンランドの「ロウリュ」のように、サウナストーブに水を掛けて水蒸気を発生させ、その熱で体感温度を上げ、湿度が感じられるウエット&マイルドなタイプが増えています。
 かつてはサウナはあくまでも風呂の脇役でしたが、現在は、サウナがメインになってきているんです。土地土地の木や石を使用し、個性豊かなオリジナルのサウナも増えていますね。

――松尾さん流サウナの楽しみ方を教えてください。
松尾 多くの人はサウナに入ると12分計を見てガマン比べをし、水風呂に直行していると思いますが、一度、時計を見ずに入ってみてください。水風呂に入った後はすぐにサウナに戻るのではなく、椅子に腰掛けて外気浴をすると、身体への負担も減り、よりリラックスできます。また、最近は、上司が部下を連れてサウナに行くケースが増えています。裸同士になるとコミュニケーションが円滑になるので、サラリーマンの方にオススメですね。
(聞き手/程原ケン)

松尾大(ととのえ親方)
札幌在住。福祉施設やフィットネスクラブを経営する実業家にしてプロサウナー。札幌を訪れる経営者や著名人をサウナに案内し、“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。

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