ためらいもなく、幼少期の体験をしてくれたのは、4年前までデリヘルやソープランドで風俗嬢をしていたフーミン(31歳)である。
彼女は現在、都内で韓国料理店を経営している。店の経営は順調だったが、新型コロナウイルスの影響で、取材の数日前からぱったりと客足が途絶えてしまったという。大変な状況ながら、笑顔を絶やさない、朗らかな雰囲気を持っていた彼女。しかし、口から発せられる言葉は、衝撃的だった。
「私は、お金に対する執着心がすごかったんです。その後もおじさんの家にちょくちょく通って、アソコに指を入れられたりしました。『君の処女は、20歳になったら僕がもらうから、体を大事にしなさい』と言われました。20歳の頃にはデリヘルにいましたけど」
金への執着心は、幼少期の環境から育まれた。
「家がとにかく貧乏でした。お父さんは、平日は何をしていたのか、土日しか帰らない人で、母親はいつも泥酔していて。小学校の時はお小遣いをもらったことがなかったんです。友達が普通に好きなお菓子とかを買っているのが羨ましくて、最初は万引きするようになりました。徐々にエスカレートして、お店で洋服だとか、お金になりそうなものを盗んで、それをフリーマーケットで売っていました。小学校4年生の頃です」
その頃フーミンは、1カ月に15万円ほど稼いでいたという。その後、万引きより自分の体を使った方が金を稼げると気づくと、おじさんに体をもてあそばれても苦ではなかったという。
その後は、テレクラや2ショットチャンネルなどで相手を探して、体を売った。中学生ながら、月に30万円ほどになったという。
「高校を中退し、18歳になると同時にデリヘルに勤め始めました。でも、最初は全然稼げなかったんです。月に10万円ぐらいでした」
店を変えようと思った時、ホストの男にナンパされ、すぐにその男と付き合うようになった。そして、男が探してくれたデリヘルで働き出すと、それまでとは打って変わって客がつき、月収は100万円を超えたという。それと時を同じくして、男はホストを辞めて、彼女のヒモになった。
「彼は毎日、パチンコをしたり、私の稼いだお金でFXをやったりしてて、一瞬で240万円が飛んだこともありました。それでも、その人のことが好きだったから、必死にもっと稼がなきゃと思って働いていました」
フーミンはさらに稼ぐため、デリヘルから高級ソープに移った。ちょうどその頃、ヒモの男と籍を入れた。
「結婚したら変わってくれるかと思ったんですけど、何も変わりませんでしたね。暴力がひどくて、もう無理だと、籍を入れて半年ぐらいで離婚を切り出しました。最初は嫌だと言われましたけど、ある日、『お前のために離婚してやる』と言われて、ピンと来たんです。こっそり携帯を見たら、他の女との間に子供を作っていました。それで、晴れて離婚できたんです」
離婚後もソープで働き続けていたフーミン。だが、そこで前夫とは正反対ともいうべき男性と出会った。
「お店のお客さんだったんですけど、ものすごく優しい人で、ほとんど喧嘩もしたことがない、神様みたいな存在だったんです。3年ぐらい付き合って、母親にも紹介しましたし、結婚するつもりでした」
その男性と出会い、精神的にも安定した日々を送る中で、ソープの仕事も辞めた。300万円ほどあった貯金をもとに、小さな韓国料理店を開いたのもこの頃だ。
当然ながら、飲食業界では前職のことを隠している。
「同業者の飲み会があったりするんですけど、『愛人にならないか』とか、平気で言ってくる人がいるんですよ。そこで風俗で働いていたなんて言ったら、どうなるか分かりますよね」
ちょっとしたストレスはどこにでもつきものだ。だが、十代から身を投じてきた風俗業界と比べると、新鮮な感覚だったという。
「夜寝て、朝起きて、生きている感じがしますね。風俗で働いている人は、重いものを背負った人も多いですし、違う世界なんだなって思いますね」
新たな世界にも馴染み、順調に交際を続け、今年には、晴れて結婚をする予定だった。
ところが、人生はうまくいかない。つい数カ月前に男性がある日突然、失踪してしまった。理由はまったく思い当たらないという。
「これまでの人生が何だったのかなと、今でも思っています。すごいショックです。何で失踪したのかはっきりさせないと、次に進むことはできません」
それでも、日々の生活は続いていく。
「何とか今の仕事を頑張っていきたいですけど、今回のコロナでどうなるか分からないですよね。つらい世界ですけど、また風俗に戻るかもしれませんね」
風俗は肉体と精神を酷使する仕事ではあるが、一方で彼女にとっては、手っ取り早く現金を得られる手段でもある。
小学生の頃から体を武器に生き抜いてきたフーミン。幼少期からの業は、彼女に染み付いているのだった。