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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第362回 令和恐慌

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提供:週刊実話

 2019年10月の消費税増税から現在に至る日本の経済危機は、完全に安倍政権による「人災」である。新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の襲来は、さすがに安倍政権に責任はないのでは、と思われたかも知れないが、そんなことはない。

 安倍政権は、3月5日になって、ようやく中国全土からの入国規制を決定した(入国規制開始は3月9日)。中国からの入国規制強化が「習近平の国賓来日延期」を受けたものであることは、誰の目にも明らかだった。何しろ、発表されたのが同日なのである。

 つまり、安倍総理は、
「習近平国家主席を国賓として日本に招く」
 に、政治的(政策的、ではない)なメリットがあると判断し、国賓来日にこだわり、結果的に、3月4日までは、
「中国全土からの外国人の入国規制に踏み切らなかった」
 ということになる。まさに、国民の健康や生命と引き換えに、「習近平国賓来日」路線を貫いたわけだ。

 もう一つ。日本国内でCOVID―19の最初の感染者が報じられたのは、’20年1月16日。神奈川県で、中国人の感染者が確認されたのが、国内感染者第1号だ。その後、感染者の報告が相次ぎ、1月27日には、新型コロナウイルスによる感染症が指定感染症に指定された。

 安倍政権は、最初の感染者が報じられた時点で、中国全土からの外国人の入国を規制するべきであった。とはいえ、実際に入国規制策が始まったのは、1カ月以上が経過した3月9日。しかも、総理は武漢市封鎖の直後、1月24日から30日まで、〈更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしています〉というメッセージを北京の日本大使館のHPに掲載した。

 何しろ、総理自ら中国人の訪日を歓迎する状況が続いたのだ。特に、2月初旬の「さっぽろ雪まつり」には、例年通り大勢の中国人観光客が訪れた。結果的に、北海道で最初のアウトブレイクが発生。2月28日には、北海道知事が3週間の間、道民に週末の外出を控えるよう要請する「緊急事態宣言」が出されるに至る。

 安倍総理が1月の時点で入国規制策を講じなかった理由は、4月の習近平国賓来日を控え、中国との関係をこじらせたくなかったことに加え、中国人観光客のインバウンド消費への期待があったことは疑いない。とはいえ、’19年の中国人観光客の日本国内における旅行消費額は、1兆7718億円。’19年の日本の名目GDP(554.5兆円)の、わずか0.32%にすぎないのだ。

 0.32%の中国人インバウンドを「惜しみ」、日本にCOVID―19を蔓延させ、インバウンド消費全体が壊滅的打撃を受けることになった。さらには、日本国民の消費も激減。損失額は、最低でも「兆円単位」であろう。

 何しろ、安倍総理はイベント自粛や小中高全国一律休校の「要請」により、日本国民の消費マインドをどん底まで叩き落としてしまった。「要請」とは銘打っているものの、イベント主催者や教育関係者側からしてみれば、自粛せずに感染者が出てしまった場合には、
「政府は自粛や休校要請をしたにも関わらず、従わなかった」
 というわけで、確実に責任を追及されることになる。しかも、イベントの場合は、安倍政権が「大規模なイベントの自粛」と、非常に抽象的な表現をしており、自粛すべき規模の客観的な基準が分からない。となると、
「とりあえず、後で責任を追及されるのは嫌だから、自粛しよう」
 と、「あらゆる規模のイベント」の主催者が考えるに決まっている。

 イベント自粛や小中高全国一律休校以前に、感染症が蔓延し、日々、増え続ける患者数が公表される状況では、国民は自ら外出を控えるようになる。結果、消費が減る。

 本稿執筆現在(3月11日)、東京の繁華街は人気が消え、まるでゴーストタウンと化している。飲食店は、夜になってもガラガラだ。

 三越銀座店の2月の売上高は、対前年比36.2%減。利益ではなく、売上が3割以上も落ち込んでしまったのだ。さらには、大丸心斎橋店が同45.5%の減少。その他の百貨店も、総じて売上2桁減という異常事態に至っている。

 3月9日に発表された’19年10〜12月期のGDP成長率(改定値)は、実質GDPが対前期比▲2.8%、年率換算▲7.1%と、速報値(年率▲6.3%)よりも悪化した。速報値と比べて特に悪化が目立つのが、設備投資だ。民間企業設備では、何と年率換算で▲17.3%と、脅威の落ち込み率になってしまった。

 政府は間違いなく「台風のせいだ」と責任転嫁に走るのだろうが、台風が来たからといって、日本国民が消費や投資を年率2桁も減らすはずがない。というよりも、本当に台風のせいでここまでGDPが減ったとすると、むしろそちらのほうが問題だ。台風一発でGDPが年率換算で7%を上回る落ち込みになるなど、どれだけ脆弱な経済なのか。

 実際には、’19年10〜12月期のマイナス成長は、消費税増税が原因だ。しかも、その後の安倍政権は’20年1月時点で、中国からの外国人入国を規制せず、COVID―19アウトブレイクを許してしまった。さらに「大規模なイベント」という曖昧な表現で「自粛」を要請し、国民に責任を丸投げし、消費の凄まじい減少を引き起こしてしまった。しかも、国民の所得を強制的に減らしておきながら、まともな損失補償策をパッケージでしか発表していない。
 すべて安倍政権の失政なのだ。

 日本政府は、すぐにでも以下の対策を打たなければならない。
(1)PB黒字化目標の破棄
(2)消費税の廃止もしくは一律10%の軽減税率の適用
(3)政府の自粛、休校要請で被害を受けた国民、企業への全面的な損失補償
(4)消費を喚起するために、国民一人当たり10万円規模の給付金
(5)医療、防災等、安全保障強化の「長期計画」を立て、予算をコミットし、企業が安心して設備投資できる状況を作る

 財源は、当然ながら国債発行だ。ここまで状況が悪化しているにも関わらず、PB目標破棄や国債増発を決断できないとなると、我が国が「令和恐慌」に突入することが確定する。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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