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特選映画情報『人間の時間』〜クルーズ旅で起こる阿鼻叫喚…“タイムリー”的衝撃作!

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提供:週刊実話

配給/太秦 シネマート新宿ほかにて公開中
監督/キム・ギドク
出演/藤井美菜、チャン・グンソク、オダギリジョーほか

 韓国映画ながらヒロインは日本の女優、助演にも著名日本人俳優が出ている。監督・脚本は、韓国の鬼才で、エロスと暴力の過激描写では定評のあるキム・ギドクだけに、けっこうエグい内容だ。おまけに“受難のクルーズ旅”というくくりで、不謹慎ながらタイムリーと言えなくもない。

 退役した軍艦を利用してのクルーズ旅に参加したイブ(藤井美菜)と恋人のタカシ(オダギリジョー)。他に艦内には著名な議員(イ・ソンジュ)とその息子アダム(チャン・グンソク)、さらにギャングや娼婦たちなど多種多様な人間が乗り合わせていた。ある朝、乗客たちが目を覚ますと、軍艦はなぜか空中に浮いている。異空間に迷い込んだのだろうか。居場所も分からず、外部との連絡もままならない状態で時が過ぎてゆくうち、不安や食料不足から、艦内はセックス、暴力、殺戮の阿鼻叫喚の地獄と化してゆく…。

 ヒロインの藤井は日韓で活躍する女優で、オダギリジョーは説明するまでもないだろう。オダギリはギドク監督と永年親交があっての“友情出演”という感じ。謎の老人役のアン・ソンギは『シルミド』(03年)などで日本でも知られている韓国の国民的俳優だ。

 乗客らはもともと歪んだ欲望をあらわにするのだが、異空間に迷い込むと、さらに欲望丸出しに暴走を加速させてゆく話で、人間は何と罪深き存在なのか、というわけだ。お説ごもっともだが、“神の視点”がかなり入っている。役名はアダムとイヴだし、エデンの園、ノアの方舟といった宗教的教訓を意識した作りになっているあたりが、いかにもミエミエなのが個人的には気になって鼻につく。同監督は『魚と寝る女』(00年)以来ご贔屓で、『The NET 網に囚われた男』(16年)も面白かったが、今回はどうも腑に落ちない。

 それでも、韓国映画としては破格の性描写、バイオレンス描写でまくしたてる力業はギドクらしさ。その名の通り“疑毒”(?)たっぷり。著名議員はギャングと結託して船を乗っ取り、邪魔者を次々と始末し、食料を独占し始める。ヒロインはレイプされ、娼婦たちは客を取り、乱痴気騒ぎが続き、ハダカもセックスも次々と。果たして、彼らに救いはあるのか? というわけだが、ラストも神を恐れぬ幕切れで、ア然とすること請け合い。

 私のように“神の視点”がウザい、と思わなけれは、これは相当の衝撃作。コロナ騒動で、列島全体がカオス化しつつある現在、怖いモノ見たさにいかがか。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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