逆に、エンジンを中国のサプライチェーンに供給できなくなったトヨタの中国工場のいくつかも、生産ラインを止めた。特に愛知県のエンジン工場は生産調整に入り、このエンジンが輸出できないと中国での生産も不可能となるため、トヨタの天津工場、吉林省、四川省、広東省などの工場も、操業不能状態に陥っている。
こうした有力企業の契約不履行は、日経新聞の2月11日付報道によると、2月10日時点で97社に上るという。こうしたことから2月に入り、中国企業が取引契約に違反した際の免責を求める「不可抗力証明書」を発行する動きが広がっている。
第1号は、浙江省にある匯大機械製造で、同社はフランスの自動車メーカーグループPSAのアフリカ工場にステアリングシステム部品を供給していた。発行元の「中国国際貿易促進委員会」は、匯大機械製造に対して2月2日に証明書を交付し、以降複数の企業に交付したという。
この証明書が発行されなければ、相手の生産ラインを停止させた理由で、3000万元(約4.8億円)の損害賠償を求められる可能性があったという。
「こうした不可抗力を宣言することをビジネスの現場では『フォースマジュール』と呼んでいます。中国に限らず世界的に貿易取引で考慮されている概念です。本来であれば『契約不履行』ということで、損害賠償の対象となるわけですが、巨大な自然災害などが発生した場合などに契約不履行とするのは、人道的にも過酷なので免除しましょうという話です。ありていにいえば、債務棒引き、徳政令のようなものです。中国・習近平政権が、どこまでの範囲で、これをやろうとしているのかは分かりませんが、相当に大きな規模に拡張させるということもあるかもしれません。中国のやることですから、外国から借りた金を『返済できません。チャラにしろ』というところまで拡大したら、世界中は大混乱に陥ります」(国際経済アナリスト)
日本企業にとっては、新型コロナウイルスで死ぬより恐い。