例年、旧正月の「春節祭」で賑わう関西最大の中華街、神戸・元町の南京町も、今年は東西南北の入り口に消毒液が置かれ、神戸市職員がマスク姿で屋台をパトロールするなど、賑わいの中にも微妙な緊張感が漂っていた。
「あれほど中国語が幅を利かせていた大阪・ミナミの道頓堀も、1月末あたりから中国人観光客は、かなり少ない印象です。すでに来日していた中国からのツアー客の中には、予定を早めて帰国するグループもいたそうです。中国人観光客目当ての物販店や飲食店は、どこも客が減っており、繁盛しているのはマスクや消毒液を扱うドラッグストアくらい」(在阪記者)
個人旅行の観光客は減っていないようだが、その行動はどこか遠慮がちだという。
「一時は部屋不足が問題視され、建設ラッシュが続いていたホテルもキャンセルが相次いでいる。中国人観光客が場所を選ばず食べ散らかし、そのマナーの悪さが問題になっていたミナミの黒門市場も、今では閑古鳥が鳴いていますよ」(同)
インバウンド特需は、確実にトーンダウンしているというのだ。
「静かになったんはええけど、その原因がコロナウイルスでは喜べんわ。不気味な静けさより、うるさい賑わいのほうがなんぼかマシやで」(鮮魚店の大将)
通天閣のお膝元、観光客の間で人気急上昇中の新世界・ジャンジャン横丁の人気串カツ屋の店員は、「最近、お客さんがゆっくりめ(出足が遅い)なのは確かやけど、それがウイルス騒動の影響とは思わない」と強気だが、「年末あたりと比べると、中国人の人出は明らかに少なくなっている」ことは認めている。
新世界からさらに南の西成・萩ノ茶屋。あいりん地区にも近いこの一帯には、中国人女性が接客する飲食店が増えているが、ここでも“中国人が接客”というだけで敬遠ムードが広がっているという。
「お客さんも減っているけど、この頃は中国人というだけで働くのも断られるんですよ」(アルバイトをしている中国人女子留学生)
萩ノ茶屋近辺は高齢者が多いため、風邪や肺炎には特に敏感になっているのかもしれない。
大々的に報じられたバス運転手の感染で、人気観光スポットが風評被害に遭ったケースも確認されている。コロナウイルスの感染者を出したツアーが立ち寄った奈良公園だ。
関係者が嘆く。
「ウチは昨秋、インバウンドの増加に備え、観光バスの駐車場を拡張整備したばっかり。それやのに、ニュースであれだけ『奈良公園で』とやられると、そら足も遠のきますよ」
春日大社(奈良市)では、一般の参拝客まで加わって、疫病平癒のための祈祷が連日行われているという。
観光立国を標榜する日本で、この不安と混乱はいつまで続くのか。