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〈企業・経済深層レポート〉 家具販売の王者ニトリがアパレル業界に殴り込み

 大塚家具のヤマダ電機傘下入りなど、苦境の続く家具業界で独り勝ちしているのが「ニトリホールディングス」(以下ニトリ)だ。

「ニトリの2019年2月期連結決算は、売上高が前期比6.3%増の6081億円、営業利益は7.9%増の1007億円で、32期連続の増収増益。まさに家具業界の巨人です。小売業としても、屈指の絶好調企業です」(経営アナリスト)

 そんなニトリが、「アパレル業界に本格参入」することが大きな話題になっている。

「ニトリの似鳥昭雄会長兼CEOが、昨年末、北海道新聞のインタビューで、’20年の大きな目標として今までは“実験段階”だったアパレルに本格参入する姿勢を明確に打ち出したのです」(同)

 実験段階ということからも分かる通り、ニトリは既にアパレル業界に参入している。

「初めて参入したのは’17年。あれから3年間、ニトリがしたことといえば関東地方に女性衣料専門店『Nプラス』という店舗を、ショッピングセンターの一部に数店展開しただけ。しかも、品揃えはこれといった大きな特徴もない商品。そのためニトリがアパレル進出と騒いでも、ノウハウもなくお手上げかと最近は話題にも上らなくなりました」(同)

 どちらかといえば、アパレル業界から“撤退濃厚”だっただけに、本格参入は衝撃的だ。とはいえ、現在のアパレル業界はいわゆる経営戦略論でいうところの「レッドオーシャン」。過当競争が進み、大不況だ。東京商工リサーチの調査でも、昨年はアパレル関連業者の倒産が増加。’19年1〜10月までの倒産件数は199件で対前年比14.3%増だった。
 例えば、「グッチ」「フェラガモ」などの輸入ブランドアパレルのセレクトショップを運営していた「サンモトヤマ」が’19年9月、約10億の負債を抱え破産している。また、婦人服大手「オンワード」は、’20年2月期中間決算で約244億円の赤字。大手紳士服チェーンも軒並み赤字だ。

 不況のアパレル業界で、気を吐いているのは「ワークマン」と「ユニクロ」くらいだろう。「ワークマン」の’20年3月期第2四半期の営業利益は、86億4200万円で対前年比55%増と大飛躍。ユニクロは’19年8月期連結決算で売上高が前期比7.5%増の2兆2905億円で過去最高となった。

 ただ、全体で見れば好調なユニクロだが、国内の既存店売上高(’19年8月期)は、対前期比1%増と微増に留まり、国内市場では苦戦している。

 このように一部企業を除き、アパレル業界は冬の時代が到来している。

「その理由は業界の過当競争による商品の低価格化、それに加え、中国などアジア諸国の労働賃金が高くなり生産コストが上昇して収益幅が悪化している点。ネット通販にも押され気味です」(家具業界に詳しい経営コンサルタント)

 そんな状況化で、ニトリのアパレル業界への本格参入、果たして勝算はあるのか。

「似鳥CEOはインタビューで30〜60歳代の女性にユニクロ以上、百貨店以下の2000〜5000円までの中間価格で、おしゃれを楽しめる店づくりを説いた。その世代の女性数は約3300万人。この層を掴めば、アパレル業界でも勝算があると睨んでいるようです」(同)

 本格参入によって、「Nプラス」を’20年に10店まで増やし、展開を本格化させる。出店先は東京、千葉、埼玉のショッピングモールで、すべて関東地方になる見込みだ。

「ニトリの576店舗を利用する声もある。ただ、家具店舗は大型商品も多く、アパレル商品との併設は難しいでしょう。そのため、専門家の間では既存の家具店舗網よりM&Aなどで、新たに200店舗規模の衣料品チェーンを買収する可能性のほうが強いと見られています」(同)

 そうせざるを得ないのは、ニトリが会社の長期目標として3000店舗、売上高3兆円を目標に掲げているためだ。
「目標達成のためには、今の家具事業に加え、グローバル化と事業領域の拡大が不可欠。事業領域の拡大部分にアパレルが大きな役割を果たすと見てよいでしょう」(金融系アナリスト)

 アパレル冬の時代でも米デザイナー「KAWS」との商品コラボなどで大ヒットの中国戦略が当たり「勝ち組」となっているユニクロ。一方では、寒さや暑さに強い衣類、いわゆる“機能性衣料”での差別化、さらにファッション性が高く、女性購買層を大きく増やしたワークマン。

 それら企業の「勝因」を横目に見据え、ニトリは3年かけて練ったアパレル大作戦で、いよいよ本格的参入に踏み出す構えを強めている。

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