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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第352回 アベ・ショックが始まった(中編)

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提供:週刊実話

 本連載第350回「アベ・ショックが始まった(前編)」で、2019年10月増税ではインフレ率がそれほど上昇せず、実質賃金(現金給与総額)の速報値が対前年比+0.1%となったと書いた。

 まずは、インフレ率を見てみると、コアコアCPI(食料〈酒類を除く〉、エネルギーを除く総合消費者物価指数)の対前年比は+0.5%。’14年時は2%超の上昇を見せていたため、かなり数値が異なる。なぜ、’19年10月の増税のインフレ率上昇は抑制されたのだろうか。

 中身を見てみると、やはり教育(▲7.8%)、授業料等(▲12.4%)、教育関係費(▲5.7%)と、幼児教育・保育の無償化の影響がうかがえる。とはいえ、第350回でも触れたが、幼児教育・保育無償化の影響を受けない世帯は、確実に「物価上昇+実質賃金下落」に見舞われているということになる。

 などと考えていたタイミングで、12月20日に、10月の実質賃金(現金給与総額)の確報値が発表されたわけだが、何と対前年比▲0.4%。速報値段階ではプラスだったのが、マイナスに転じたのである。

 速報値のプラスから、確報値でマイナス化とは、相変わらず統計がいい加減としか表現のしようがない。プラス幅やマイナス幅が変わったというならばまだしも、プラスのマイナス化はひどすぎる。安倍政権は、この手の下方修正が本当に多い、恥ずべき政権である。

 実質賃金が全体で▲0.4%ということは、子育て世帯ではない世帯は、より激しい実質賃金下落に見舞われているわけだ。

 ちなみに、きまって支給する給与も対前年比▲0.1%に下方修正された。結局、’19年で実質賃金が対前年比で上昇したのは、多少の駆け込み消費があった9月のみ、という結果になりそうだ。

 実質賃金以上に悲惨な状況になっているのが、景気動向指数である。

 ’19年10月の景気動向指数は、景気の現状を示す「一致指数」が95・3に落ち込み、前月を5ポイント下回った。悪化の幅は’14年4月の増税時(▲4.8%)を上回り、東日本大震災があった’11年3月以来、8年7カ月ぶりの大きさである。

 ちなみに、景気動向指数研究会は、’18年12月に、
「前回の景気の谷から足下まで明確な下降はみられず、第15循環の景気の谷(’12年11月)以降、’17年8月以前に景気の山はつかない」

 として、安倍政権の「景気拡大を「いざなぎ越え」と判定。

 とはいえ、日本経済は実際には’14年4月に「景気後退」に落ち込んでいる。理由はもちろん、前回の消費税増税である。つまりは、’14年3月に「景気の山」をつけているのだ。

 ところが、’14年4月に景気後退に陥ったとなると、誰が考えても「消費税増税が理由」という話になってしまう。財務省主権国家の我が国において、消費税増税で景気後退に陥るなど、あってはならない。というわけで、景気動向指数研究会は、’14年4月以降の落ち込みについて「見て見ぬふり」をしたのである。

 前回の景気後退(’14年4月以降)は、’16年8月前後に底打ちし(=景気の谷)、その後は’17年秋に再び山を打ったように見える。理由は、消費税増税の悪影響が長引いていることに加え、米中覇権戦争による外需停滞など、複合的なものだろう。

 そして、景気動向がなだらかな下降線を描いているタイミングで、’19年10月に再度の消費税増税が強行された。1997年、2014年と、過去の消費税増税のタイミングは「景気拡大期」であった。消費税が増税され、日本の景気は失速し、「増税直前」が景気の山をつけていたのだが、今度は「景気後退期の増税」なのである。これは、初めてのケースだ。’19年10月の景気動向指数は、何と’13年春の水準に戻ってしまった。つまりは、過去7年の安倍政権の「経済政策」とやらの効果は消滅したことになる。

 この状況で、日本経済は五輪不況、7月再増税(ポイント還元終了)というネガティブなイベント目白押しの’20年を迎えることになる。大変残念ながら、五輪を開催した国は、その年は必ず不況になる。考えてみれば当たり前の話だが、五輪向けのインフラ整備は、五輪開催の「前年」に終了しているのだ。昨年はあったインフラ整備が、今年はない、ということになり、五輪不況を避けることはほぼ不可能だ。

 そして、キャッシュレス決済のポイント還元が、’20年6月30日で終了する。翌7月1日、我々はまたもや消費税を「増税」されることになるのだ。

 11月以降の数値も、悲惨な状況が続いている。日本工作機械工業会が12月10日に発表した11月の工作機械受注額(速報値)は、前年同月比▲37.9%減(!)の817億円。14カ月連続のマイナスとなり、’19年に入ってからの最低水準を更新した。ちなみに、工作機械受注額は、将来の設備投資の状況を示す。

 また、日本百貨店協会が12月20日に公表した11月の全国百貨店売上高は、対前年比▲6%。10月の▲17.5%に続き、2カ月連続のマイナス。特に、化粧品や衣料品など、軽減税率対象外の商品の下落が目立っている。

 アベ・ショックが始まった。

 安倍政権は、今回のアベ・ショックについて「外需停滞のせい」と、責任逃れを図ることが確実だが、許してはならない。現在の日本国民の貧困化は、安倍政権の苛政の結果であり、人災なのだ。

 緊縮財政による不況・再デフレ化、出生数の激減(※次回)、国民の貧困化と分断の責任者は誰なのか。責任者を明確化するためにも、今回の災難は「アベ・ショックである」という認識を広く共有する必要があるのだ。その上で、我々は政治的な選択をしなければならない。アベ・ショックという人為的な経済危機を引き起こした政権や与党を許すのか、それとも……。

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