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天候を司る氷の神へ願いを託す「献氷祭」──奈良・氷室神社

 東大寺の南、春日神の使いとされる鹿が遊ぶ奈良公園に鎮座する氷室神社。わずかに残っていた桜の花びらが境内に舞う5月1日、製氷業者らが集う「献氷祭」が行われた。

 GWの最中、しかも「平城遷都1300年祭」期間中ということもあって、周辺は大変な熱気と賑わい。さらに真夏のような日差しも照りつけていたが、“氷”に彩られた境内だけはひやりと涼しげだった。
 この祭は全国の製氷業者、販売社らが氷を奉納し、順調な天候の推移と業績を祈願するもの。と聞けば何やら新しい行事のようだが、旧暦6月1日の宮中の氷の節会、氷室の節会に起源はさかのぼる。氷または氷室の神を祀ることで豊かな実りを祈ったのだ。また氷の薄厚で豊作を占ったとも伝わる。冷蔵庫などない当時、自在に作ることのできなかった氷は、天候の象徴の一つであっただろうことは想像にかたくない。

 本殿に海の幸の代表・タイ、里の幸の代表・コイを封じ込めた二基の大型氷柱が奉納され、神事は幕を上げる。彩りを添えるのは色とりどりの花氷。きらきらと光を反射しながら、少しずつ形を変えていく氷柱が参道に並ぶさまはとても不思議だ。もと興福寺の楽所であり、末社に南都舞楽の楽祖を祀ることもあって、伝統ある舞楽も奉納される。

 ところで氷室神は春日神と仲が悪いのだとか。鹿島から移ってきた春日神が、この地に鎮座していた氷室神に藁を置く場所を乞うて了承を得たところ、広い場所をとったせいだという。鹿島神は春日山の地主神・榎本神との間にも同様のトラブルが語られていて面白い。

 氷室神社は蓄熱技術の守護神ともされ、5月28日には「蓄熱祭」が行われる。もちろん舞楽も奉納もあり。

(写真「本殿に奉納されたタイとコイの氷柱」)
神社ライター 宮家美樹

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