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詐欺、収賄、流出、誤配…不安だらけのマイナンバーに「百害あって一利」はあるのか(2)

 仮に本元が万全だとしても、ベネッセ事件のように委託先が再委託した先からナンバーが漏えいすることだってあり得る。IT企業幹部が続けて語る。
 「米国がいい例で、1930年代から社会保障番号制度を採用し、現在はコンピューター管理をしていますが、民間の識別番号としても使われているため、ハッカーがネットバンキングなどから“成りすまし”でカネを盗み出す被害が絶えないのです。米連邦司法省によると、その被害額たるや年間約500億ドル(約6兆円)にも迫る勢いで、イギリスは同じような危惧から5年前にこの制度を廃止している。制度発足に際しては、韓国紙から『日本は韓国式監視社会のドアを開けた』と警鐘を鳴らされる始末です」

 日本は世界的なIT後進国。やはり制度の運用に対する不安はどうしても拭えない。それでも“徴税の不平等”が緩和されるという期待がないわけではない。
 「税の不公平感を揶揄する『トーゴーサンピン』という言葉があります。日本の労働人口の約8割を占めるサラリーマンの所得は10割捕捉されますが、自営業者は5割、農林水産業者は3割、政治家は1割という意味です。マイナンバーはこうした不公平を解消し、平等に課税されるのが建前となっています。最近はサラリーマンであっても、ネット通販などの副業に励む人が増えています。年間100万や200万円程度なら税務当局もいちいちチェックできずに見逃すだろうと考える人もいるようですが、マイナンバーによって、パソコンのクリック1回で当該口座が閲覧できるようになれば税務署も見逃さないでしょう」(節税に詳しい証券アナリスト)

 複数の会社から報酬を得ていたり、投資など収入や資産状況が複雑な富裕層への影響はどうか。
 「一部に資産フライト(海外に資産を移すこと)で脱税しようという動きが活発化しましたが、マイナンバーで銀行口座を把握されるようになれば、多額のカネを引き出した時点で当局からマークされますね」(同)

 マイナンバーで戦々恐々とするのは、飲食業や風俗店、さらにパチンコ店などの脱税常習業種だといわれる。特にパチンコ業界は店の口座だけでなく、オーナーやその家族の銀行口座がマイナンバーによって把握されるので、脱税が指摘されやすくなるのは確実だ。
 夜の街も大変化すると予測する経済アナリストもいる。来年からマイナンバーに伴って「会社バレ」や「身内バレ」を恐れてキャバクラやクラブ、ソープなどを辞めてしまう“お嬢”が多くなり、人手不足が深刻化するというわけだ。こうなるとOLや主婦による突撃的な“個人売春”が横行するようになるかもしれない。

 ところでごく一部に、マイナンバーの影響を受けない人々がいる。銀行が預金約款の中に「反社会的勢力排除条項」を加えたことで、預金口座を持てなくなった闇社会の住人たちだ。とはいえ、ぜいたく三昧の組織のトップが税務当局から捕捉されたという話は、今までもあまり聞いたことがない。なぜなのか。
 ヤクザと税に詳しいジャーナリストの伊藤博敏氏は「マイナンバー制度のヤクザ社会への影響ははっきりしていませんが」と前置きした上でこう解説する。
 「彼らは現金手渡しを常とし税務申告はしませんが、豪邸や高級車を購入すれば説明がつかない。ですから確認できない話などで税務署を煙に巻き、最後は恫喝で無理を通す。それがヤクザの道理です。そもそも税務当局は、社会正義から業務を遂行しているわけではないので、手間と命の危険を冒してまで税務調査に入ることはないのです。ただし警察との連携プレーの上で、カネの“出処”からあぶり出していけば、暴力団マネーへの課税はできると言う国税庁幹部はいます」

 ネット上でも「税や社会保険の徴収などで管理を強めたいだけ」「年金のように情報漏洩が心配」「住基ネットの二の舞いで浸透するとは思えない」など批判ばかりが目立ち、いい話はまったく見当たらない。
 アングラマネーさえ捕捉できないようなら、やはり百害あって一利なしだ。

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