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俺達のプロレスTHEレジェンド 第50R 正反対のキャラクターで魅了した兄弟〈ザ・ファンクス〉

 プロレス界における年の瀬の風物詩といえば『世界最強タッグリーグ戦』。近年は出場メンバーこそすっかり小粒になったものの、それでも開幕戦では全選手が名前入りのタスキを掛けてリング上に集合するなど、懐かしき伝統はしっかりと受け継がれている。
 その最盛期の主役といえばもちろんテリー&ドリーのザ・ファンクス。ブッチャー&シークの「地上最凶悪コンビ」から、ハンセン&ブロディの「ミラクルパワーコンビ」まで、相手は変われどもテリー&ドリーは日本勢を差し置いて、ベビーフェースのトップとして激闘を繰り広げてきた。

 1977年、前身の世界オープンタッグ選手権を含め、6回の出場で優勝は3回。まさに歴代最高のタッグチームであった。
 '70年代後半から'80年代初頭にかけては「全日本のエースは馬場・鶴田ではなくこの2人」と言われたほど。試合会場にはチアガール姿の親衛隊が登場し、よみうりランドでの『全日本プロレスファン感謝デー』には2人のファンが山となって押し掛けた。“アイドルレスラー”と呼ばれたのも、その元祖はこの2人である。
 「日本プロレスへの来日時には馬場&猪木のBI砲からインタータッグ王座を奪取したこともありましたが、絶大なる人気を得るようになったのはやはり全日参戦以降です。テリーのやられっぷりが、日本のファンの判官贔屓気質をくすぐったのでしょう」(プロレスライター)
 ブッチャーにフォークで上腕を切り裂かれ、割れたビール瓶で胸を突き刺される。それでも立ち上がるテリーの不屈の姿は、今なお日本のプロレス史上屈指の名場面として記憶される。あえてハンセンとブロディに完膚なきまでに叩きつぶされる“弱い姿”をさらけ出してみせることで、格好を付けた勝利だけではない“負けの美学”がテリーにはあった。

 そして、そんなテリーの人気を陰で支えたのが、兄のドリーだ。
 そろって派手に暴れ回るようなタッグチームはいくらでもあるが、ファンクスのようにキャラクターが正反対というのは世界的にも珍しいのではないか。
 「ドリーが冷静沈着なファイトスタイルで試合を引き締めるからこそ、テリーの放埓な魅力が引き立った。ドリーほどの選手が脇に回るのだから、そりゃあスゴいチームにもなるでしょう」(プロレス記者)

 全日時代からしか知らないファンからすると、ドリーがかつて“実力世界一”と称されたことにピンとこないのかもしれない。だが、その実はとてつもなく革命的な選手であった。
 まずドリー以前のプロレスにおいては“グラウンドの攻防”というものはほとんど見られなかった。当時は技を極めるか逃れるかという単純な構図で成り立っていて、ドリーはそこへ“スピーディーな技の応酬”を持ち込むことに成功した。
 小さめの身体でヘビー級としてやっていくため、ロープワークやエルボースマッシュなどの打撃も積極的に取り入れ、これによってプロレスは格段に進化し、近代化へと歩を進めることになったのだ。
 ちなみにアントニオ猪木も引退時、東京スポーツ紙上のインタビューにおいて、自身の名勝負の第1位にドリーとのNWA戦を挙げている。本当に猪木本人がそう言ったのか、それとも東スポ記者の創作なのかはともかく、そういわれるにふさわしい選手であったことには違いない。

 一方のテリーももちろん、ただの“暴れ馬”ではない。
 「NWA王者として一度は頂点を極めたにもかかわらず、50歳を過ぎてなお各地のインディ団体に参戦し、時にデスマッチにも挑戦してみせた。とても余人にマネできるものではありません」(同・記者)

 一度はヒザの故障で引退しながらも、鎮痛剤を打ちながらリングに復帰すると、晩年になって初めてムーンサルトプレスを繰り出してみせるなどリングへの意欲は衰えることがなかった。
 「WWEで、同じ元NWA王者のハーリー・レイスが“帝王”と呼ばれていたその一方で、テリーは“チェーンソー・チャーリー”なるハードコアギミックでリングに上がる。そんなテリーの姿はまさに“リビング・レジェンド”です。プロレス愛を感じざるを得ません」(同)

 ファンがテリーを応援し続けた理由がそこにある。

〈ザ・ファンクス〉
 兄ドリー・ファンク・ジュニア(1941年生)と弟テリー・ファンク(1944年生)の兄弟タッグチーム。アメリカ・インディアナ州出身。そろってNWA王座に君臨する。ファンクスとしての初来日は'70年。'73年からは全日プロのエース外国人として活躍した。

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