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データ改さんで広がる波紋 崖っぷち神戸製鋼に浮上する買収先

 銅、アルミ製品などのデータ改ざんの不祥事により、神戸製鋼所(以下、神鋼)の信頼は地に落ちた。残された道は、もはや大手からの吸収合併か解体身売りしかないのではとも囁かれ、飲み込む側の“大蛇企業”の具体的な名前も飛び交い始めている。

 まずは鉄鋼業関係者が、今日の神鋼の業界の立ち位置をこう解説する。
 「神鋼の凋落は、すでに2012年、新日本製鉄と住友金属工業の合併で新日鉄住金が誕生したときから始まっていました。神鋼は新日鉄の0.77%、新日鉄が神鋼の4.45%の株の持ち合いをして、仲間と思っていた。しかし、突然の合併通知に、神鋼は肘鉄をくらわされた格好になったのです。それには、神鋼がプライドが高く、自主独立路線にこだわりすぎたという理由があったのです」

 世界の製鉄業界を見渡すと、中国の過剰生産による鉄鋼不況の影響が、日本にも直撃している。そのため国内企業では、大手製鉄企業が相次いで合併し、防衛と強化を図っている。
 '02年、川崎製鉄と日本鋼管が手を組みJFEホールディングスを設立。'13年には、古河スカイと住友軽金属工業が統合し、UACJが発足した。
 「それでも、合併して国内首位になった新日鉄住金ですら、粗鋼生産量で世界4位、JFEは同8位。その中で神鋼は、一気に51位にまで転落してしまった。しかも神鋼は、鉄鋼、アルミ・銅、建設機械の規模がどれも中途半端。単独での成長戦略を描けないまま、今年3月期の連結決算でも赤字で苦しんでいたのです」(鉄鋼メーカー幹部)

 それを打開するために神鋼の川崎博也会長兼社長が背水の陣として目指したのは、独自技術を活かしてそこそこの実績を上げつつ、電力事業で補うというものだった。
 「川崎氏は、本業の鉄鋼業ではどうあっても大手とは太刀打ちできないと見て、発祥の地、神戸市の高炉の休止を決断し、同じ兵庫県の加古川製鉄所に工程を集約して、鉄鋼事業の効率化に動いた。そして神戸市の粗鋼生産終了後に火力発電機2基を設け、同市内のピーク時の7割の電力を賄える発電を行い、活路を見出そうとしていた」(電気事業関係者)

 今後においても、栃木県に1000億円を投じてガス火力発電所を建設。他にも火力発電所を増設し、近い将来は総発電量390万kWにまで押し上げ、沖縄電力の240万kWを超える国内最大の独立系電力会社にする計画だった。
 「電力を屋台骨として、神鋼がもう一つ力を入れ始めていたのが、アルミ事業。今年5月、神鋼は日韓でのアルミ事業に550億円を投資すると発表しており、その直前には、130億円を投じてスウェーデンのプレス装置メーカーの買収を決めた。電力や新たな積極投資の先には“鉄の神鋼”ではなく、鉄鋼も手掛ける複合企業を目指し、それが最大の防衛策になると考えていたのでしょう」(経営アナリスト)

 しかし、今回は、その積極策の一つだったアルミ事業での不祥事が発覚してしまった。それだけに、これを契機に神鋼の独立採算路線もこれまでか、と囁かれているのだ。
 「最終的には、どこに吸収合併されるかが焦点となる可能性が高い。その筆頭は、国内のJFE。神鋼は車のエンジンや足回りに不可欠な線材という特殊鋼製造で、新日鉄住金と国内生産を二分してきた。それだけに、新日鉄住金に追いつけ追い越せのJFEにすれば、喉から手が出るほど神鋼が欲しいところ。実際、神鋼不祥事発覚前も再三、秋波を送っていましたからね」(業界専門誌記者)

 一方の新日鉄住金にすれば、前述のように神鋼とはもともと相互に株を持ち合うなど近い関係にある。
 「過去、多少の行き違いがあったとはいえ、神鋼が追い込まれれば新日鉄住金が手を差し伸べるでしょう。ただし、単純に合併すれば線材や建材用鋼材で独禁法違反の恐れも出てくる。それをどうクリアするかが問題となります」(同)

 また、昨年の粗鋼生産で世界第5位の、韓国のポスコも、神鋼の買収を狙っているとされ、「シャープが台湾の鴻海に買収された時と似た状況が考えられる」(同)という。
 「中国の宝武鋼鉄集団の名も聞こえています。同国では盛んに“日本の品質危機”と報道されているが、実際はJIS規格よりも厚い部品が使用されていたので、安全性には問題がない。つまり、今回の神鋼のデータ改ざんは、客が150%の品質を求め、神鋼が130%の品質のものを提供した類です。確かに不正は不正だが、これで神鋼が中国に手を付けられるようなことがあれば、国家の損失にもつながりかねない」(同)

 果たして神鋼は生き残れるのか、それとも吸収により、その名を消すことになるのか。

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