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奈良の神社話その十一 太陽神に捧げられた双子の神鏡−−磯城郡田原本町・鏡作坐天照御魂(かがみつくりにますあまてるみたま)神社

 その昔、“俵本”と表記された田原本は、弥生時代より集落が開けた稲作地帯だった。ここに拠点を築いたのが古代の工人集団・鏡作部。鏡作郷と呼ばれた一帯には、彼らが祀った“鏡作”神社がいくつも存在する。

 中心は鏡作坐天照御魂神社こと鏡作神社。祭神は天照国照彦火明(あまてるくにてるひこほあかり)命、鏡作氏の遠祖・石凝姥(いしこりどめ)命と天糠戸(あまのぬかど)命の三座。彦火明命は謎の多い神だが、当社では「太陽の輝きそのもの」とする。桜井市の神奈備・三輪山と奈良と大阪の境・二上山をポイントとした太陽の運行観測点としても機能していたらしく、太陽と関わり深い神社である。

 創祀はこうだ。崇神天皇は大殿内に皇祖神である天照大神をお祀りしていたが畏れ多くなり、皇女の豊鍬入姫命に託して宮中より出すことにした。大神は姫の手によって大和・笠縫邑に祀られた後、倭姫命にバトンタッチされて伊勢へと鎮座する。

 一方、伊勢へ遷した神鏡に代わる新たな鏡の制作が石凝姥命の子孫・鏡作氏に命じられた。完成した鏡は内侍所に納められ、試鋳された像鏡、つまり双子の鏡の片方は天照国照彦火明命と称えられて同社に奉祀されたという。神社には神宝として「三神二獣鏡」が伝わる。

 同社西には石凝姥命を祭神とする鏡作伊多(いた)神社が、東には天糠戸命または天麻比止都(あまひとつ)命を祭神とする鏡作麻気(まけ)神社が鎮座する。鏡作神社の原宮司は「伊多」は「鋳た」、「麻毛」は「磨け」を示すのではないかと推測される。鏡を鋳造する地区、磨く地区。こうした作業工程に当てはめれば奇妙な響きの社名もなるほどと思わされる。尚、北部にも鏡作坐若宮神社がある。

(写真「2000年の社叢に守られた本殿」)
神社ライター 宮家美樹

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