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弱くても食べていける強固な組織〜日本相撲協会2

 先回、どんなに弱くても、本人にヤル気があって、部屋の師匠が認めれば、辞めずに食べていけるのが相撲界だと記した。史上最弱力士の森麗(大嶽)の例を挙げました。

 今回は昭和以降では、史上最高齢力士・一ノ矢(高砂)の例を挙げてみたい。07年11場所を最後に引退した一ノ矢は、当時46歳。番付は序二段103枚目だった。一ノ矢は83年に、相撲界初の国立大学(琉球大学)出身力士として、若松部屋(02年に高砂部屋に吸収合併)に入門。現役生活のほとんどを序二段、三段目で過ごし、最高位は91年7月場所の三段目6枚目で、幕下に上がることすらできなかった。99年3月場所で三段目から序二段に陥落してからは、長きにわたって序二段生活が続いた。06年3月場所では最下位の序ノ口に陥落するも、1場所で序二段に復帰。現役生活を定位置の序二段で終えた。

 46歳まで、闘志が衰えなかった一ノ矢も立派だが、万年序二段の中年力士に引退勧告を突きつけなかった師匠・高砂親方(元大関・朝潮)も凄い。一ノ矢は弟弟子に当たる元横綱・朝青龍の面倒を入門当初から見てきたため、朝青龍から一目置かれていた。相撲部屋では横綱の存在は絶対的なもの。朝青龍が味方に付いていたことが、一ノ矢の現役続行にプラスにはたらいたともいえる。

 支配下登録選手数に上限があるプロ野球のようなシステムでは、毎年、否応なしに力なき者はさらざるを得ない。その点、相撲界では所属力士数に制限はない。その上、力士を育てるために、協会から部屋持ち親方には、金が支給される。幕下以下の力士の人数分出る毎月の力士養成費の他、場所ごとに全所属力士の人数分の部屋維持費、稽古場維持費が協会から支給される。力士が在籍していれば、たとえ弱くても金が受け取れるわけだから、師匠も弱い力士の現役続行には寛容。そこが、決して弱肉強食とばかりもいえない相撲界の特徴なのだ。

 次の機会には、相撲部屋の運営についてふれてみたい。
(ジャーナリスト/落合一郎)

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