search
とじる
トップ > スポーツ > 『2012年問題』イチローとマリナーズが異例の契約前倒し交渉

『2012年問題』イチローとマリナーズが異例の契約前倒し交渉

 イチローを凝視せよ−−。米国メディアがマリナーズ・イチロー外野手(37)の周辺を探り始めた。その関心の高さは『11年連続200本安打』が掛かっていたシーズン中以上と言っていいだろう。

 イチローの代理人、トニー・アタナシオ氏がマリナーズの要請に対し、「11月下旬、遅くとも12月上旬までには会う」と回答した。マリナーズがアタナシオ氏に会談を申し入れた目的は1つ。2012年のシーズン終了と同時に満了する契約内容についてだ。
 07年オフ、イチローは『5年9000万ドル』の大型契約を勝ち取った。当時のレートで約110億円。年俸22億円は歴代4位の高額となった。もっとも、MVP1回、首位打者2回、盗塁王1回、ゴールドグラブ賞10回、シルバースラッガー賞3回、新人王と、高額年俸に相応しい成績を残してきたのも事実である。
 「メジャーでは複数年契約を交わす大物選手に対し、契約最終年の途中で契約期間を更新するのは珍しくありません」(メジャー中継の解説も務めるプロ野球OB)

 しかし、1年半も更新の打ち合わせを前倒しする話は、あまり聞いたことがない。
 米国メディア人の1人がこう言う。『10and5veto』をマリナーズが意識したせいもあるらしい…。『10and5veto』を平たく説明すると、10年間メジャーでプレーし、そのうち5年以上同じチームに在籍すると、自動的に『トレード拒否権』が与えられる。イチローは10月4日(現地時間)にこの権利を取得した。
 「11年のシーズン(今季を含め)が経ましたが、その間、憶測も含め、米メディアはイチローの放出、不要論、強豪チームとのトレード説を報じてきました。こちらが知り得た情報では、イチローは何回か、優勝争いのできるチームへの移籍を考え、一部にその相談もしていました。でも、マリナーズ残留は彼自身が選択したことです。単なる形式かもしれませんが、契約更新の話し合いの第一歩として、球団は『10and5veto』の取得したイチローに残留の意志を確認したかったんでしょう」
 代理人との会談の目的は、2012年満了の契約の更新についてだ。さらに米メディアは「マリナーズは適当な年俸額、契約年数について、決めかねている」との情報も掴んでいるそうだ。
 「要するに、今季の打撃不振が影響しているんですよ」(前出・米国人メディア)
 今季の成績は打率2割7分2厘、安打数184本。メジャー11年目で初めて打率3割を切った…。この打撃低迷について、前出のプロ野球OBもこう懸念する。
 「2通りの意見が出ています。今季の不振を一過性とする声と、加齢によるレベルダウンを指摘する向きです。オリックス時代を知るコーチは『動体視力が落ちた』と言っていましたが」

 マリナーズは「残留してほしい」と願っているのは間違いない。だが、メジャーは『実績』ではなく、『現在』で年俸額、契約年数を決める。低迷した今季の打撃成績が新年俸の参考材料となるため、「大幅ダウンは必至」との見方が支配的だ。ジャック・ズレンシクGMは「チームにとっては重要な存在」と言ったが、エリック・ウェッジ監督のコメントが興味深い。
 「来季の(打順)1番は決めていない。いずれにしてもチームが強くなる方法で考えたい」
 今季の出塁率は3割1分。過去10年の通算が3割7分6厘だから、「1番・イチロー」を確約しなかったのも当然だろう。しかし、イチローは1番の打順に強いこだわりを持っている。歴代監督が戦況によって3番を打たせたこともあったものの、イチローはその采配にも否定的な見解を口にしている。これが別選手であれば、首脳陣批判でペナルティーも発生していたはずだ。ウェッジ監督は『最優秀監督』に選ばれた名将である(07年/インディアンズ)。当時の報道によれば、「規律を重んじ、ワガママな選手を厳しく処罰する」とあった。同監督を招いたGMは「リーダーシップに期待している」と就任会見で語っていた。打順を巡る歴代監督とイチローの衝突を思うと、イチローに“1番降格”の引導を渡せる指揮官とも考えられるが…。

 「イチローの希望金額、契約年数を確認し、球団として、どこまで歩み寄れるかがポイントになります。今季の成績では大幅ダウンは必至です。来季前半戦の成績を見て、球団は具体的な数字を提示するつもりでは」(米特派記者の1人)
 年数については「2、3年」と予想する声が多かった。
 蛇足になるが、この情報を提供してくれた米国ライターが「マリナーズとの契約延長の交渉が破談した場合、イチローは日本に帰るのか?」と聞いてきた。日本帰還説の根拠を聞き直すと、どうも、中日監督に就任する高木守道氏の「イチロー、福留、川上を獲りたい」なるリップサービス(9月23日)が誤って伝わっていたらしい。
 今オフ、イチローは2013年以降のアウトラインを描こうとしている。

※メジャー関連のカタカナ表記は『メジャーリーグ選手名鑑2011年』を参考にいたしました。  ジャック・ズレンシクGM(Zduriencik )については、「ズレンシック」、「ザーエンシク」と表記するメディアもありましたが、本編は現地特派記者団の表記に従いました。

関連記事


スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ