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空席が目立った新年のハロコン ファンも苛立ち

 新年のハロー!プロジェクトコンサートツアー、通称「ハロコン」が東京・中野サンプラザで幕を開けた。
 例年通りの光景だ。しかし、どこか様子がおかしい。いつもとは空気が違う。モーニング娘。の名称が「'15」から「'16」になったことや、エース・鞘師里保の不在はあるものの、そうした織り込み済みの変化ではない。会場を訪れたハロプロファンには、不安、焦り、苛立ちなどの動揺もそこかしこに見られる。1998年から続く名物コンサートに、今、なにが起きている?

 1月2日、中野サンプラザのステージに立ったのは、℃-ute、モーニング娘。'16、アンジュルム、Juice=Juice、カントリー・ガールズ、こぶしファクトリー、つばきファクトリー、そしてハロプロ研修生の総勢64名。華やかな衣装に身を包み、キラキラした笑顔とともに踊る様は、まさしく豪華絢爛。新鮮な顔ぶれも多く、フレッシュ感は満載だ。従来より30分長い約2時間半の公演時間に、全31曲というボリュームも大満足…のはず。なぜ、不安や苛立ちがファンの間に広がっているのか。

 端的に言ってしまえば、「空席」が目立っているのだ。初日こそほぼ満席だったものの、2日目から一部のファンが“異変”に気づきはじめた。平日公演となる3日目、4日目には、1階後方や2階後方の数列が丸々空席に。あまりにも2階に空席が多いため、ステージ上からの「2階席のみなさ〜ん!」というお決まりの呼びかけもされなくなった。
 「今年は1月4日から仕事がはじまる人も多いから、平日が埋まらないのは仕方がない」
 そうした見方もある。例年より開演が1時間早い点も、社会人ファンが足を運べない理由のひとつだろう。しかし、会場やネット上で盛んに交わされているファンの声を聞く限り、空席の要因はそれらだけではないようだ。

 今回のハロコンが例年と異なる点、そこから「空席」の要因を探ってみたい。
 第一に挙げられるのはチケットの販売方法だ。一部例外もあるが、基本的にハロプロのコンサートチケットは、「一律価格」で販売されてきた。着席観覧の「ファミリー席」を選ぶことはできるものの、あとはすべて「一般席」として、最前席が届くのか、はたまた最後列となるのかは運次第。ところが今回は、SS席、S席、A席という全3種(ファミリー席を除く)のチケット。当然、価格も異なる。
 かねてから、「座席ごとに価格を変えるべき」という声はファンの間にもあった。ならば、この変化は「改善」と見るべきだが、一概にそうも言えないのだ。前述のような意見の多くは「ハロコンのチケットは値段が高い。学生らにも購入しやすいよう、後方の席はもっと安くすべき」という旨だった。しかし、今回売り出された3種は、SS9500円、S8500円、A8000円(すべてファンクラブ特別価格)と、ファンの要望とは異なるものだった。
 この料金改訂には、昨秋、運営サイドからファンクラブ会員に向けて「全国的な宿泊費の高騰など、コンサート全体経費の増大に対して」と、正直すぎるほどの説明がされている。また、近年行ってきた「2つの演目」を1つに絞ることや、公演時間を長くすることも同時に告知された。このときには発表されていないが、「休日の1日3回公演撤廃」も含め、「効率」を重視したビジネス的な判断と言えるだろう。
 この販売方法に、ファンは困惑した。今までならば、一律価格で申し込めば、運良く前方のチケットが回ってくる可能性もあった。しかし、数量限定のSS席の抽選に外れてしまえば、「埋もれ」と呼ばれる中盤以降の席しか手にできないことがはじめから分かっていた。「後方席」と予告されたA席を望む者などいるはずがない。結果、「買い控え」や「様子見」が進んでしまったのだ。

 さらに踏み込んで考察するならば、「転売屋」と呼ばれる者たちの存在も大きく関わってくる。彼らはファンクラブで正規に購入したチケットを、ネットオークションなどで転売する。当然、不正行為ではあるが、事実上の野放し状態だ。運営側にとっては、チケットが正価で売れさえすれば、その後にどのような価格でやり取りされようが関係ない、というのが正直なところかもしれない。しかし転売屋は、利益が望みづらい後方のA席など、端から購入しない。結果、これまで転売屋が放出した後方席を比較的安価に入手していた客層は、観覧自体を見送った。

 今回のハロコンが取りこぼしている客層がもうひとつある。「リピーター」だ。長期間にわたって公演を重ねるツアーでは、何度も足を運ぶリピーターの存在が不可欠だ。しかし、前述のように「演目の一本化」を事前に発表。全31曲のうち4曲の回替わりを設けてはいるものの、残り27曲がまったく同じとなるため、リピート来場へのモチベーションが湧きづらいのだ。
 コアなファンになりづらい女性客やライト層の取り込みを近年強化していたこと、ハロプロ全体ではなくひとつのグループを中心に応援する“専ヲタ”が増えていることなども、ハロコンでのリピーター減少の一因になっているはずだ。

 このような現状に対し、「空席があっても俺たちには関係ない。別に気にすることではない」とクールな態度のファンもいる。しかし一方では、空席が多くなった要因を真剣に考え、ときには運営に対する厳しい言葉も混じえながら、改善の方向を語るファンも少なくない。いや、それが大多数だろう。
 それも当然だ。客入りが悪ければ、いずれ公演そのものが存続できなくなり、自分たちが応援するアイドルの活動が危うくなる可能性だってあるわけだ。ファンによる“ダメ出し”も、熱烈な愛情と期待ゆえだ。
 こうしたあたたかく親身なファンが多いのも、老舗ハロプロならではだろう。あとは、ファンの心配や不満、信頼や期待に、運営サイドがどう応えていくかだ。

 ブームは去ったと言われがちなアイドル業界。「空席」問題は、どのグループにとっても他人事ではないだろう。多くの卒業や解散を経て、2016年が「変化」の年になるのは間違いない。ビジネスとして効率を考えるのは当然であるし、じわじわと環境が悪くなるのを待たず積極的に変化を打ち出すのも評価したい。半年後、夏のハロコンがどのように変化していくのか、今から楽しみだ。

【リアルライブ・コラム連載「アイドル超理論」第十回】

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