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オリンピックに『野球・ソフト』が復活するには(中編)

 東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長でもある森喜朗元首相は「もっと必死になって…」「むしろ、心配している。危機感が全くない」ともらしているという。追加種目の当選を目指す野球・ソフトボールの関係者に対しての発言だ。同組織委員会で事務総長を務める武藤敏郎氏も、「世間をもっと盛り上げてほしい」と、野球関係者に訴えていた。
 「今年3月ごろだったと思います。野球・ソフトの当選はかなり厳しいとの情報が組織委員会にも伝わってきました。組織委員会側がなんとか押し戻したと聞いていますが」(体協詰め記者の1人)
 国際オリンピック委員会(IOC)には、開催都市の人気スポーツを追加することで大会を盛り上げ、収益も増やそうとの考え方もある。しかし、世界的に見て競技人口のバラつきがある野球は、6か国でメダルを争うことになった。「2分の1」の確率でメダルが獲得できる計算で、国際的には「金メダルの価値観が落ちる」と懸念する声も多い。

 追加種目を争う“ライバル”に、空手がある。空手は日本が発祥地であり、最大のアピールポイントは世界180以上の国と地域が世界空手連盟に加盟していること。競技者人口も約6000万人と発表されている。また、日本武道館などの既存施設で開催できる。野球・ソフトの弱点がIOCの言う「国際的普及度を低さ」ならば、空手はその点を逆に強みとしてアピールしていた。
 「2014年6月、空手を応援する議員連盟も発足しています。菅義偉官房長官も駆けつけています」
 全日本空手道連盟の会長は、元自民党総務会長の笹川堯氏である。
 同年11月、ドイツで世界選手権が行われた際、「空手の追加種目当選を願う署名運動」も見られた。もっとも、空手の弱点を挙げるとすれば、既存競技のテコンドーと“類似”していること。形や組み手などの種目数も多く、個人、団体などもあるため、メダルを量産してしまう。

 「野球・ソフトの会場になるとされるのは、横浜スタジアムとQVCマリンです」(野球担当記者)
 どちらも屋外球場である以上、試合日程が天候に左右される危険性を秘めている。このへんについても、野球・ソフトは『予備日』を設けておかなければならない。東京ヤクルトスワローズの本拠地でもある神宮球場も使えなくなるうえに、同球場は高校野球、各大学リーグ、社会人も利用する。

 また、IOCがもっとも嫌う“事件”は、ドーピングである。組織的なドーピング疑惑がロシア陸上界に向けられており、先頃、ドイツ陸上連盟が「事前検査をクリアした場合でも、ロシア、ケニア両選手のリオデジャネイロ五輪出場を認めるべきではない」とする書簡をIOCのトーマス・バッハ会長に送っている。何が言いたいかというと、世界はクスリに対し、強い嫌悪感を持っているのだ。

 野球・ソフトが当選した場合、プロ野球12球団から選手が選出される予定だ。ここで気になるのは、野球界のクスリに対する意識と自浄努力である。NPBは日本アンチ・ドーピング機構に加盟していない。相撲、ボクシング、日本ゴルフツアー機構も加盟せず、独自のシステムで検査を行ってきたが、プロ野球界は清原和博元選手の『覚せい剤取締法違反』という、衝撃的な事件に見舞われている。NPBは「検査の甘さ」も指摘された。昨年には賭博事件も発覚し、まだ調査(一部警察捜査)が続いている。政治有力者も応援するライバルの空手に対し、プロ野球界の一連のスキャンダルはIOC選考委員の目にどう映るのだろうか。(スポーツライター・美山和也)

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