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三菱重工が武器輸出先陣で馬脚 〜特定秘密保護法の危うい算段〜

 得意先が唯一、防衛省に限定される“防衛産業”に格好の追い風が吹きそうだ。
 政府が「武器輸出三原則」の見直しを検討しているためで、当初は年内にも新基準を策定する方針だったが、反対する公明党に配慮し、年明け以降に先送りした。とはいえ、安倍政権が正面突破を図るのは間違いなく、1967年に当時の佐藤栄作首相が国会で表明した「共産圏」「国連決議で輸出を禁じた国」「国際紛争当事国」−への輸出を禁じた基本戦略に風穴があく。

 その際のキーワードが政府原案にある。すなわち「わが国の安全保障に資する場合」は輸出できることだ。
 これを踏まえれば武器輸出の品目や地域、さらには武器の共同開発などにも対応でき、ビジネスチャンスは一気に拡大する。市場関係者が「これまで継子扱いだった防衛産業は笑いをかみ殺すのに懸命だろう」とつぶやくのも無理はない。

 案の定、日本の防衛産業を代表する三菱重工業に“大型商談”が浮上した。政府はトルコとの間で戦車や艦船のエンジン、無人航空機など防衛装備品の共同開発を検討しており、その第1弾として三菱重工とトルコ企業が現地に合弁会社を設立し、トルコ軍向けに戦車用エンジンを供給する計画が進行中だ。そのシナリオライターこそ、今年の5月と10月にトルコを訪問し、エルドアン首相と会談を重ねた安倍普三首相に他ならない。
 「5月に訪ねたときは五輪誘致でライバル関係にあるトルコへの表敬訪問とか、日本企業の原発輸出に向けた地ならし作業などといわれたのですが、その時点でトルコ側から武器輸出の商談が持ち上がり、安倍首相が飛びついた。だからこそトルコ政府は韓国と進めていた戦車用エンジンの共同開発を打ち切り、安倍首相が10月末に再訪問した直後に商談を成立させたのです」(政府関係者)

 道理で安倍政権は慌てて武器輸出三原則の見直しに着手したわけだ。関係者が続ける。
 「親日国で知られるトルコからのラブコールだから安倍さんは悪い気がしない。しかし、三菱重工と共同開発した武器技術が第三国に流出すれば、日本の安全保障が脅かされかねない。そこでトルコに徹底した軍事技術の保全を求める一方、自らも秘密保全を約束した。その延長にあるのが、世間的には対米向けと理解されている特定秘密保護法だったのです」

 トルコは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で、米国との関係も良好だが、日本がトルコに厳しい軍事機密の保全を求めたこと自体、米国には歓迎すべきことだろう。兵器ビジネスに詳しい商社マンは「トルコで成功すれば、日本は他の国々とのビジネスが拡大する。トルコ向けの戦車用エンジンは、その一里塚にすぎない」と指摘、安倍首相の“商魂”に目を見張る。
 ただ、どれだけの国民が武器輸出三原則の方針転換に賛成するかは怪しい限り。まして軍事機密だけならまだしも、国民への敵意をむき出しにしたような特定秘密保護法に至ってはなおさらのことだ。

 だからこそ小野寺五典防衛相は定例会見の席上、日本とトルコの防衛装備品の共同開発について「武器輸出三原則の例外化に今回の事例が当たるか当たらないか、検討していくことになると思う」と述べるなど、実に歯切れが悪かった。言い換えれば、まだ生煮えの段階で本邦初となる三菱重工とトルコ企業による軍事用の合弁事業が表面化したため、政府は秘密保護法との関連性も含めダンマリを決め込みたいのだ。
 「トルコ政府は新年早々にも三菱重工に対し、合弁相手の候補企業を紹介する段取りになっている。いわば“お見合い”で、両社が本格的に動くのはそれからです。むしろ三菱重工が彼の国で注目を集めているのは、これまた安倍首相がシャシャリ出て商談をまとめた大型原発の方です」(前出の商社マン)

 三菱重工と仏アレバ社はトルコで原発4基の優先交渉権を確保、議会の承認を得て正式契約の運びとなる予定。総事業費2兆円超のビッグビジネスだ。成功すれば東電の福島原発事故後では初めてとなる原発輸出である。
 一方、サウジアラビアでは東芝が大型原発の受注競争に名乗り出ている。これまた政府間交渉を買って出たのは安倍首相で、5月の訪問時に「強く売り込んだ」(情報筋)という。
 「サウジも親日国で、アメリカとの関係も良好。安倍首相がトルコに続く武器輸出の相手国と考えたとしても不思議ではありません。先方に秘密保護を徹底させるためには自らを律する必要がある。そう解釈すると、安倍政権が特定秘密保護法の成立をあれだけ急いだ事情が透けてきます」(永田町関係者)

 武器と原発の輸出大国−−。これが安倍首相の目指す“美しい国、日本”の姿のようだ。

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