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「ミリ飯」ブーム生んだ“本家”自衛隊ランチ事情

 “ミリ飯(めし)”なるものがちょっとしたブームという。ミリタリー飯の略でいわば軍隊の非常食だ。陸上自衛隊朝霞駐屯地の同広報センターでは、お土産用の各種ミリ飯がバカ売れ中。どれほどの味か試食するとともに、本家本元の自衛隊ランチ事情を探った。
 広報センター内の売店がミリ飯を扱ったのは約4年前。当初からコンスタントに売れる商品だったという。ゲームセンターのUFOキャッチャーの景品に使われたり、世界各国の軍隊が採用するミリ飯の食べ比べ解説書が出版されて注目度が増した。売店を運営する朝霞防衛共販の和田高則店長は「月間1000食は売れますね。多めに発注していますが、それでも5月の連休後は売り切れてしまいました」とうれしい悲鳴をあげる。

 背景には迷彩柄ファッションが人気になるなどアーミーブームの隆盛がある。マニアだけでなく一般にも自衛隊員の衣食住への関心が高まり、ヒット商品に育った。
 人気商品は加熱できる「あつあつ」シリーズだ。売れ筋ベスト3はウインナーカレー、すきやきハンバーグ(各750円)に、トマト味リゾットや丸かじりチキンの入ったサバイバル食というラインアップ。3食入りの防災弁当1日セット(1980円)も飛ぶように売れている。自衛隊土産では1個だけ“激辛入り”のせんべいやまんじゅうなどが主力だが、ミリ飯が猛追している。
 非常食だけに調理法は手軽だ。迷彩柄の箱には耐熱ビニール袋に入ったレトルトごはんとおかずパック、先割れスプーンが入っている。ビニールの底には加熱剤があり、コップ1杯の水を入れると湯気がもうもうと立ち始めた。約20分後には出来上がり。さあ、メシだメシだ。ウインナーの具が入ったカレーをかけ、ハンバーグをご飯にのせる。アツアツご飯をカレーでかきこむと、なるほど納得のうまさ。ハイキングなどに持っていくのもいいな、と思った。隊員が一日活動するのに必要なカロリーが摂取できる本物に比べ、土産用はカロリーを抑えている。
 しかし自衛隊員はそんなにうまいものばかり食べているのか?
 陸自東部方面総監部広報室の永徳一也報道幹部によると、隊員の食生活はかなり改善されたという。「ひと昔前は麦の入れすぎでごはんの色は黒に近かった。いまは食堂でもミリ飯でも、ごはんはうまいしおかずの味付けもいい」
 災害時に備えて自衛隊法では、独身隊員は駐屯地で暮らさなければならない。つまり3食とも駐屯地内でとるわけだ。階級別の食堂で食べるほか、演習では炊事所を設営して調理したり、ミリ飯が配られる。永徳氏は「厳しい訓練で食事は毎回楽しみですから、必然的においしくなった側面もあるでしょう。しかし、部隊として炊事能力を向上させることもまた必要なのです」と説明する。調理のうまさだけでなく、だれが欠けても衛生面や安全面を含め首尾よく食事をつくる能力が求められる。
 ミリ飯には缶入りの「缶メシ」とレトルトパックの「パックメシ(戦闘糧食)」がある。隊員にはパックメシが人気だそうだ。「演習中は食事を楽しむより、さっさと食べて少しでも体を休めたいんですよ。食べ終えたあとの処理も缶よりかさばりませんからね」と永徳氏。ミリ飯人気については大歓迎という。
 「興味本位で構わないから手軽にリュックにミリ飯を蓄えてほしい。阪神大震災直後はみな非常食や防災グッズに飛びつたが、いまはほとんど気にしなくなった。四川地震が起きるなどいつ地震や水害が襲うとも限りませんから」(同)
 保存期間は1〜3年。すぐ食べたい人は予備分も購入しておこう。
 地獄の演習で隊員が持つ携行食は1食約1000キロカロリー。40〜50kgの装備と銃を担いで一晩で40〜50キロ歩くにはそれぐらいのエネルギー源が必要になる。「演習はこたえます。装備は肩に食い込むし足を1歩出すごとにジン、ジンくる。眠いし、つらいし、疲れるし、で眠ったまま藪の中に突っ込んでしまう隊員もいる。雨が降れば足の裏がふやけてシワとシワがくっついてマメができやすいし、股ずれで血が出てきたこともあります」(永徳氏)
 食事を楽しむ余裕は滅多にないが、缶メシではたくわんと赤飯、ウインナーが人気。パックメシではカレー、チャーハン、ハムステーキがうまいという。気になるうまさレベルは「ファミリーレストランで出してもバレないぐらいのうまさ」(同)。そんな中、たくわん、赤飯、ウインナーは家族から「食べずに持って帰ってきて」とリクエストされる隊員も多い絶品という。
 一般人がこれほど過酷な生活を送ることはないだろうから、販売用のミリ飯は1食あたり700〜800キロカロリーに抑えられている。永徳氏は「極限状態を乗り切った仲間と食べるからこそ余計においしく感じるのでは」と話している。
陸上自衛隊広報センターは、朝霞駐屯地に併設され、陸自活動を紹介するほか館内外に戦車や装甲車、ヘリコプターなどを展示している。射撃などの体感型シミュレーションはリアル。館内では迷彩服上下(身長約80〜190cm)やヘルメットを無料で貸し出しており、プリクラを撮るなどアーミースタイルで遊び回ることができる。

 ▽東京都練馬区大泉学園町(東武東上線・有楽町線「和光市駅」から徒歩15分)。駐車場あり。入館料無料。午前10時〜午後5時まで。毎週月曜、毎月第4火曜休館。詳しくはhttp://www.mod.go.jp/gsdf/eae/prcenter/を参照のこと。

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