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理科離れ克服は、あぶない科学実験で

 「理科離れ」が深刻な問題と認識されている。「理科離れ」の危機感を煽る人々の背後には、予算枠拡大を目論む理系研究者や技術者を求める産業界の思惑もある。そのために額面通りに受け止めることはナイーブであるが、高度成長期の少年ほどに現代人が科学技術にワクワクしなくなったことは確かである。

 このような状況に対し、サイエンスライターの川口友万氏は「サイエンスにもっと笑いを」をモットーに活動している。川口氏の新刊『あぶない科学実験 リアルライトセーバーからエアバズーカ、光るピクルスまで』(彩図社、2010年)では、身近な材料を利用して、爆発や炎上などワクワク感のある科学実験を行っている。例えば備長炭を放電させて映画『スターウォーズ』のライトセーバーのようにする実験などである。

 実際にインパクトのある科学実験を行いたい人にとって本書はハウツー本になるが、本書の醍醐味は失敗の記録も書かれている点にある。実際、川口氏は実験で何度も何度も失敗している。川口氏は「おわりに」で以下のように記している。

 「手を動かし、足を運び、ヤケドしたり壊したりしているうちにただ暗記するだけの数式、アルファベットが並んだだけの無色の化学式が不意に鮮やかに色づく」(172頁)

 ここに理科離れ克服の鍵が隠されているように思われる。

 科学を権威や無味乾燥とした学問ではなく、面白いものと考える川口氏は、好奇心豊かで柔軟である。雪の結晶を作る実験は書籍『水からの伝言』を読んだことがきっかけという(128頁)。これは江本勝氏の書籍で、水に言葉をかけると人間の意識が刷り込まれ、結晶の形が言葉に影響されると述べる。この書籍は世界各国で翻訳され、道徳の授業にも使用されたが、科学信奉者からは疑似科学・ニセ科学と激しくバッシングされた。

 しかし、疑似科学・ニセ科学とラベリングして声高に排斥する科学信奉者の姿勢こそ、科学的精神から最も乖離している。彼らの主張の是非以前の問題として、その攻撃性には強い違和感を覚える。その意味で『水からの伝言』を実験の出発点とする川口氏の柔軟性は特筆すべきものである。その上で、川口氏は「『ありがとう』と書いた紙を貼ったからキレイな結晶ができるわけではない」と結論付けている(132頁)。

 川口氏は劇団『あぁルナティックシアター』が下北沢小劇場「楽園」で1か月に渡り開催するイベント『博覧狂喜博覧会』にも出演する。9月23日19時から「川口先生の世界一あぶなっかしい科学実験室」と題し、怪しくも面白い科学実験を披露する。科学のワクワク感を伝える川口氏の活躍に期待したい。

(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)

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