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『最高の人生の終り方』脚本の粗を吹き飛ばす山下智久と前田敦子の兄妹愛

 TBS系木曜ドラマ『最高の人生の終り方〜エンディングプランナー〜』が、2月23日に第7話「ありがとう兄ちゃん〜妹の初恋」を放送した。脚本の粗が目立つ作品ながら、主人公とその妹を演じる山下智久と前田敦子の兄妹愛が光った。
 『最高の人生の終り方』は現代でタブーとされがちな死を扱ったドラマとして注目を集めたが、脚本の粗が目立つ。第2話「涙と葬儀屋の謎」では警察御用達の葬儀屋が警察に「お清め」と称してビール券を贈る。これは公務員倫理上問題である。現実に公務員がタクシー利用時に運転手から酒を提供される居酒屋タクシーが問題となった。
 警察にビール券を贈る発案者は井原晴香(前田)である。葬儀屋としての経験の浅い主人公・井原真人(山下智久)を指導している。国民的アイドルグループAKB48の不動のセンターが、大人の事情を知り尽くしている世渡り上手を演じることはアイドルへの幻想を破壊する効果がある。
 第4話「遺産相続〜白紙の遺言状の涙」では遺言書と思っていたものを家庭裁判所の検認を経ずに開封した。遺言書を家庭裁判所外で開封することは民法1005条によって5万円以下の過料に処せられる。
 但し、ここで開封された遺言書はタイトルに「白紙」とあるように法律的な遺言書の要件を満たしておらず、民法1005条違反にはならない。タイトルも「遺言書」ではなく、「遺言状」としており、遺言書無断開封の問題から逃げられるようにしている。しかし、それは悪しき結果オーライの考え方である。
 当事者達は遺言書だと認識していた。当事者達は民法1005条を知らないか、知っているならば故意に法律に違反する意思で開封したことになる。無断開封は警察官や葬儀屋が同席する中で行われた。葬儀屋という相続問題と接点のある職業の人間が、遺言書無断開封に関わらせることはドラマのリアリティーにとって致命的である。

 さらに教師と女子高生の教え子の肉体関係が描かれる。第6話「哀しき不倫愛の結末〜孫への愛」では教え子側の成長という視点で物語が進み、大団円の終わり方になっているが、現実には通用しない。不倫という点がクローズアップされたが、社会的には教師が教え子と関係を持ったことの方が問題である。いかなる背景があろうと懲戒免職ものである。
 教師と教え子の関係という点では2011年放送のフジテレビ月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』が現代版『高校教師』を彷彿とさせながらも、結局は何もなかったというオチであった。何もなかったとしなければ現代の道徳観念では主人公を擁護できないからである。
 今回も晴香が小学校の校長先生(竜雷太)の送る会を仕切るという感動的な展開に仕上げたが、強盗犯に殺害されるという校長先生の悲劇的な死に対する無念さや悔しさという感情が見えない。寿命で亡くなった場合と殺された場合の反応は同一ではない。近年問題になっている孤独死という展開にした方が自然であった。
 警察御用達の葬儀屋として殺害された死体に見慣れているとしても、知っている人が殺された場合は衝撃を受ける。実際、第2話では無縁仏にドライな考えを示した晴香も校長先生は真心を込めて送ろうとし、同業者の一之瀬壮太(駿河太郎)に食ってかかる。

 このように粗の目立つ展開であるが、それを吹き飛ばすものが妹思いの兄を演じる山下と思いをぶちまける晴香を演じる前田の熱演である。ジャニーズの山下とAKB48の前田というアイドル人気先行のキャスティングに見えるが、そのアイドルの演技にドラマが救われている。

(林田力)

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